1954年生まれ。北九州市小倉生出身。今日まで50年間、小倉で音楽活動を続けている。
中学時代よりブラスバンドでフルートを始め、高校・大学時代はジャズ、ロック、ポップスに興味を持ちバンド活動なども行う。
大学卒業後、小倉のキャバレーにバンドボーイとして入り、サックスを始める。以後、小倉を拠点に九州、中国、四国で演奏活動し、国内外の多くのミュージシャンと共演を重ねる。
また、1980年より3年間、伝説の九州の老舗ジャズ喫茶「アベベ」を経営。2004年から現在まで、ライブハウス「ビッグバンド」を経営し、活動の拠点としながら日々の練習に励む。音楽には広く精通しているが、主に Dexter Gordon 、Cannonball Adderlley 等を敬愛している。

 北九州のジャズ・シーンを歩み続け、あくまでも当初から地元での活動にこだわり、小倉のジャズ(北九州のジャズとも言う)を模索し続けていたテナー・サックス奏者の田部俊彦。今では自他共に認める、小倉のジャズを確立させたミュージシャンと言うべき域に辿り着いている。
 北九州大学を卒業後にプロの世界へ。バンド・ボーイから始めた音楽人生が40年以上になる。ジャズ喫茶の老舗で名高い「アベベ」の最後の経営者でもあったが、その後、自らの活動の地となる、「BIG BAND」をオープンさせて、今年で30周年を迎える。
 おい街Webマガジンの開設を飾るのにふさわしい、北九州のミュージックシーンを一直線で駆け抜けている彼に、小倉のジャズをアメリカ民謡「朝日のあたる家」(アニマルズのヒットで有名な曲)のアレンジ・演奏で、 録音してもらうことに成功した。(ピアノは岩崎大輔)
 田部さんに簡単に解説していただきました。
 「ゴスペルっぽく明るく、ブルース的にジャジーに演ってみました」と。
 お聞きください。これが小倉のジャズです。
 そして彼の今だからうかがえる質問、聞ける話、語れる話、音楽、ジャズ、時代の流れに咲いた花、散った話、笑える話などを交えて、ひとつ突っ込んだ話を聞いてみたい。
(聞き手:高野敬市)


Q. .何から話をしていくかを考えたのですが、小倉のジャズを確立した田部さんが、今はどんなアーティストの曲を聞いているのかを、まず聞きたいです。
A.若手のジャズメンを聞きます。クリス・ポッター、ジョシュア・レッドマン、エリック・アレキサンダーとかね。
Q. マイルス・デイビスとか、ジョン・コルトレーンとかは余りきかないんですね。ところで、だれが一番好きなんですか?
A. デクスター・ゴードンです。
Q. 彼のアルバムって、シロウトからすると聞きやすい。そう、デビューから晩年まで、そんなに変化のない人だからか、安心して聞けますね。
A. いや、多分、彼は聞けば聞くほど味のある奏者の一人です。
様々なアーティストのものを吸収し、それを自分のものにしているのが彼の素晴らしいところです。
活動が再開してからのデクスター・ゴードンの音を聞くと、色々いるアーティストの奏法からアドリブまでをほとんどマスターしている。
それをデクスター・ゴードンならではの個性として消化しきっているから、スゴいんですよ。
例えばコールマン・ホキンスの音色、ジョン・コルトレーンのハーモニー感覚も、レスター・ヤングのレイド・バック(タイム感の奏法テクニック)など、スゴいんですよ。
Q. へえ、僕は奏者じゃないからわからないですよ。(笑)
昔、田部さんがアルト・サックスをやっていたので、チャーリー・パーカーの影響を受けたとばかり世間では思っている人が多く、僕もそうだと。田部さんに聞く訳にもいかないし…。
A. あれは、最初にテナー・サックスを持っていないかったし、弟からもらったと言うか、取り上げたんですよ。
Q. えーっ、そんな裏話があったんですネ。(笑)
この話は、今初めて明かしているのでしたら、驚き‼
チャーリー・パーカーはカリスマ性のあるアーティストとしてあの40年~50時代、ジャズを聞くなら、チャーリーパーカー。さらにコルトレーン、マイルス・デイビスを教科書のように、ジャズメンは学んでいかないといけないものと、僕はそう感じていたんですよ。
A. 確かにそういう風潮が昭和の時代にはあったんですよ。
僕も実は、今だから言えることがあって…。
チャーリー・パーカー、コルトレーン、マイルス・デイビスを駆け出しの頃は先輩が沢山いて、「チャーリー・パーカーいいやろ⁉」「どう思う?」そう聞かれる。
そうしたら、「解らないです、いいところが」とかは口が裂けても言えないのです。
「いいですねー」と解ったふりをして合わせる。
当時の人達って多分、ジャズ喫茶のカウンターに座ってマスターの言うことに同調しないと馬鹿にされる、と思ってた人が多いと思いますよ。(笑)
この話は、7、8年前、あるミュージシャンと話していて、「田部さん、チャーリーパーカーがあの当時(昭和50年代)、いいと思って良さがわかっていた?俺わからんかったんよ」と言うんで、そしたら「俺も実は分からんやったんよ」と二人で大笑いです。(笑)
「これっていいネー」っていう人、沢山いたけど、本当にしっかりと分かっていた人は、いなかったと思いますよ。
いたらゴメンナサイですけど。(笑)

   【田部俊彦の選んだ名盤コーナー】   
Q.デクスター・ゴードンのおススめアルバムは?
A,
・初期の「ダディー・ウィズ・ザ・ホーン」
・中期の「ゴー」
・後期の「ラウンド・ミッド・ナイト」 …です。

Q.ジャズのミュージシャンを10人絞って、そのミュージシャンの最高作をあげるとしたら?
A,
1.チャーリー・パーカー…ザボイ・セッション
2.マイルス・デイビス…カインド・オブ・ブルー
3.ジョン・コルトレーン…バラード
4.ビル・エバンス…ワルツ・フォー・デビー
5.ジャッキー・マクリーン…クール・ストラッティン
6.チェット・ベイカー…チェット・ベイカー・シングス
7.キース・ジャレット…サンベア・コンサート
8.ウィントン・マルサリス…スタンダード・タイム
9.スタンリー・タレンタイン…シュガー
10.フィル・ウィズ…ウォーム・ウッズ …です。
Q. そうなんですか。ジャズをしている人はわかっていると思っていたし、僕はロックが好きでしたから。
わからないとは言えないが、あまり好きでありません、っという感じで決して「いいネ」という必要がなかったから、この問題をずーっと今日まで封印してたんですよ。
それで自分で聞いてわかろうと勉強するんですよね。
アルバムに沢山聴いているうちに解るかもと思ってマイルスも沢山買って聞く。
結局、聞きやすいというか、心地良いが、いいアルバムと。
で、そのアルバムはジャズメンの人からはどう評価されているか?
その意見が近いと、なんか自分もジャズが少しは解ってきたのかと、安心するみたいな…。
A. あの時代って、モード・ジャズがカリスマ性の強烈なジャズメンによってやられていたから、理解はともかく、「すごいジャズ!」である、という評価が自然にわいてきて、「いいよネー」って皆が言っていましたね。
そう、全く”本音では言えない”ムーブメントで、ジャズを聞くってカッコいいものだと勝手に思い込んだり、自分より年上の人の方が、言ってることが正しいと。
よく解らないが、「いいですネ~」と言うのが当然みたいな空気が風になって吹き荒れていたんですよね。極端に言うと、戦時中に戦争反対と言えない、そんな風潮でしたからネ。(笑)
Q. 実は、年上の人がそう言うなら、まして単なるリスナーのファンとしては、音楽理論を知らないし、「よくわからない‼」という本音が言えなかった。
ジャズ喫茶が僕らにとっては、カリスマでもあったし…。(笑)
A. まあ、僕もキャバレーでビッグバンドのメンバーとしてサックスを吹くより、コンボバンドでやらないとカッコ良くないと思っていたし。(笑)
ところが実際はビッグバンドのプレイヤーの方が、しっかり音楽理論をまあ知っていたし。
それはビッグバンドの人達と会話をしたり、プレイをしてみると、「以外だ‼」と知ったわけですよ。そんな意味でキャバレーでもビッグバンドの人達から、すごく大切な意外な現実を知ることが出来たのです。
ジャズ喫茶はモード・ジャズをガンガン流す。
キャバレーではダンスの為のジャズをやっている。
しかし実の所は、師とあおぐべき人は、ビッグバンドの人達だった訳ですよ。その人達って進駐軍で本場のジャズを要求されて鍛えられた人達ですし。
Q. なるほど‼話がかなり本音で、面白く、オカシくもあり、笑えたりする。
この続きは次回でやりましょう。(続く)


ジャズライブハウス・ビッグバンド
http://bigband-jazz.com/access/
 
福岡県北九州市小倉北区紺屋町7-17 ダイヤビル2F
●093-551-4395(受付18~25時)
●営業時間:通常 20〜25時
●定休日/火・水曜日
料金システム:バー営業時はドリンク500円~ 
※ライブ開催日はチャージ、オープン時間が異なります。
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