作り手のこだわりと、食べる人の感性が一体化した時、ラーメンのウマい‼という味に感動が生まれる。この魅力を体験した人は幸せで食通として一人前、とさえ言われる。
 麺屋・一の坊は今年でオープン15年目を迎えた。クセの強いラーメンから、晴れ晴れとした気持ちの良いラーメンへと、味の流れを変えた店として評価は高い。小倉の老舗和食の料理長が、「ウマい‼」とうなったラーメンの味を、ご賞味くだされ。

 博多ラーメンと久留米ラーメンと北九ラーメンを豚骨ラーメンでくくる。熊本県では豚骨・鶏がら・カツオ節のスープ。鹿児島県では黒豚骨・カツオ節スープと、ひと昔前は地域色があった。これらを総称したのが九州ラーメンで①。昆布、チリメンジャコで出汁をとる大阪ラーメン②。塩味の豚骨スープからアクを脂で抜き、しょう油味コンソメ状スープにしたのが東京ラーメン③。塩・味噌・しょう油で調味してバター、鶏脂、ラードを入れてコクのあるスープで食べるのが札幌ラーメン④。これもひと昔前の地域色のあるラーメンの違いであった。
 昭和40年代から50年代初期は東京で九州ラーメンの豚骨味を食べさせてくれるラー麺屋がなく、九州人は「東京のラーメン、うまくない‼」と口を揃えて言ったものだ。
 今では九州どこ行っても様々な九州ラーメンがあり、東京、大阪でも九州ラーメンが食べられる。九州では何故か、前記した②③④のラーメン店は数少ない。豚骨味が日本のラーメンの主流となった感もある。大手チェーン店は良い意味でも、そうでない意味でも味わいの違いの食文化を変えてしまった。ラーメンに限らずだが。
 著者の世代に言わせてもらうならば、ラーメンにしろカレーにしろ、ウドンにしろトッピングというのが理解しずらい、好んで楽しむことが出来ない。トッピングとは何やら。トッピングのルーツやら、発祥の食の起源を探りたくなるほど。トッピングに対してウンチクを言いたい。あるカレー店でトッピングを何種類も頼んで、払った金額がカレー代で2000円に。この女性の母親が作ったカレーはどんなだったのか?と思ってしまう。ラーメンにしても、トッピングをやたら揃えている店には、なんだか足が遠のく。されにハリガネ、バリカタと言う若い客が言っている姿を見て、知ったかぶりをして失礼な客だと店の人は思うのでは?いや、僕がオーナーだったらカタめんは受けても、バリカタ、ハリガネは出さないと言うだろう。
 小麦粉で作った麺に熱をしっかり通さないと、美味しくない。消化に悪い。それを言わせているオーナーは単に商売人で、ラーメンを食文化とは考えていないのでは?と思う。
 そんな訳で、自分の行きつけのラーメン店は、味、雰囲気、メニュー、価格、オーナーの姿勢もっと言うなら、入魂している芸術的ラーメンか?ただ頭で考えて、手で作るラーメンか?とまで考える。いや、実に世の中に味わうべき食に関する奥の深さ、広さがあるものだ。高倉健の映画「幸せの黄色いハンカチ」。出所してまずラーメン屋に入り、ラーメンを食べるシーンがある。高倉健のファンでもないが、この食べ方に一発で山田洋二監督がOKを出したという。汁をすする音、メンをすする音。ラーメンを食べる音、表情が、シャバに出た味わいを表現していると監督をうならせたらしい。
 いつも、いつ行っても、納得するラーメンが出てくるか?これは厳しい言い方だが、これを実践することは、実に苦労の多い仕事だ。たかがラーメンと言えど、豚骨の日々の状態やら、その日の温度、湿度、自分の体調までの変化を含めていくと、最高のラーメンを絶えず出し続けるというのは、無敵のピッチャーのごとく立派な技であり、魂がある。
 
 仕方なくやる仕事、やりたくてやる仕事、と二つに分ける。やりたい仕事で作るラーメンの方がウマく出来るのに決まっている。今の世の中、やりたい仕事をやっている人達が、果たしてどの位いるのだろうか。
 「やりたい仕事に飽きることはないのか?」と、質問をしてみた。「飽きることはないです。毎日、毎日、来られるお客様も違いますし、新しいお客様も来られますし、週に二、三回来てくれるお客様もいます。皆様が求めていらっしゃるのが伝わる。そこには飽きるというものはなく、常に緊張感が湧いてくる。美味しいと思っていただきたい。毎日を例えていうならば、無敗を続けているピッチャーのマウンドみたいなものです」。
 本屋、書店。この二つの呼び名で、どうイメージが違うか?大型書店と言うが、大型本屋とは言わない。書店の方が現代的な言い回しである。ラーメン屋とラーメン店でも少し違ってくる。ここは麺屋「一の坊」。で、他のラーメン店とはイメージが異なる屋号である。格式が感じられる。日本的であるが、“坊”は中国大陸的なニュアンスを含む。ラーメン店と知って行く。「ウマい‼」「そうでもない」と、味がはっきりと記憶に残りそうな名称でもある。だったら、絶対に美味しいラーメンを出さないと、店は人を呼び込む力が失せる。
 麺屋「一の坊」は今年で16年目。場所は立地的にはさほど良い所とは言えない。が、一度行くと、駐車場が4台分あり、店の外装も内装もラーメン屋とは少し違う。入って右側と左側にカウンターがある。15年経ったとは思えない清潔感と無駄のない空間に心地良さが、カウンターに座る前から感じられる。ラーメンと焼き飯を注文する。昼時でもあり、客が6、7人はいる。カウンターから見える厨房。業務用の冷蔵庫がピカピカで、中が広い。ラーメン屋のイメージはふっ飛んでしまう。これでラーメンが美味しければ◎二重丸をつけたくなる。

麺屋一の坊
北九州市小倉北区竪町1-2-34(西小倉駅より徒歩約5分)
●TEL.093-561-3181 ●営業時間/1:00〜21:00
●定休日/毎週火曜日定休日
●ホームページ  http://www.menya-ichinobou.com  

 食べたらトンコツのクサい匂いがない。が、こってりはしているが、あっさりともしている。ラーメンの麺の量が他の店よりも多いと思った。チャーシューが良質で美味しい。焼き飯、ギョウザもとてもいける。食べては帰り、又、客が入ってくる。長居は無用な美食家が来る店だ。次々と入れ替わる。
 手際よくラーメンを作り、焼き飯を作り、オーダーを聞いて、後片付けする男性2人。オーナーの寺田寛さんと店長の高野由太泰さん。
 好感度は高い。41歳と33歳の名コンビなのだろう。忙しい日は夕方の3時〜4時に店を閉めることもある。スープが切れたら終わる。が、夜遅くまで次のスープを煮込んで作る。女性客が1人で来るラーメン屋はザラにはないが、美味しい、クサくない、清潔な店、それらが女性に安心感を与えるのだう。チャーハンを税抜きで1000円で出している店と、焼き飯の味が劣らない。まだまだ初心が根付いている16年目の店。それが舌の肥えた客にも支持されているし、キレイ好きな女性客にも受けが良い。
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